こんにちは、看護師のあまのです!
医療現場で働いていると、誰もがインシデントを経験します。
インシデントを起こすと、「インシデントレポートを出しておいてね」と言われるでしょう。
インシデントレポートの書き方がわからない。
大丈夫です。詳しく説明しますね!
この記事では、インシデントレポートの書き方や書く目的について解説します。
書くときに気を付けることや例文も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
インシデントレポートとは?
インシデントレポートとは、医療現場における医療ミスにつながるような行為や、誤った医療行為につながる事象を把握し、原因を分析するためのレポートです。
基本的には、インシデントを起こした当事者が書くことになっています。
インシデントとアクシデントの違い
「インシデント」と似ている言葉に「アクシデント」があります。
「インシデント」とは、医療ミスが結果的に事故に至らなかった事象のことで、「ヒヤリハット」とも呼ばれます。
「アクシデント」とは、医療ミスにより患者に被害を与えた医療事故のことです。
よって、インシデントはアクシデントの一歩手前の医療行為と言えます。
インシデントもアクシデントもレポートの報告対象となります。
インシデントレポートを書く目的
インシデントレポートを書く最大の目的は、「インシデントの再発防止」です。
厚生労働省の『インシデント・医療事故の定義』によると、以下のことが記載されています。
インシデントレポートは事故当事者の個人的責任を追及するものではなく、収集した情報を分析し、医療事故防止の改善策を検討し実施する目的に使用する。
よって、インシデントレポートは、「犯人捜しをするもの」や「反省文」ではないと言えます。
インシデントレポートを通して、職場内で情報を共有することで、医療事故に対する職員全員の意識を高めることができ、再発防止につなげるために大切なのです。
わかりやすいインシデントレポートの書き方
インシデントレポートは、医療機関ごとに独自のテンプレートが用意されていることが一般的です。
ですが、インシデントレポートを書いたことのない方が突然書かなくてはならなくなったとき、何をどのように書けばよいかわからないですよね。
ここでは、インシデントレポートには何を書けばよいのか、わかりやすく紹介します。
インシデントレポートに記載するべき項目
・ 患者情報
・ インシデントを起こした当事者の部署・経験年数
・ インシデントの種類
・ 患者に対する影響度
・ 原因の分類
・ インシデントの概要
インシデントレポートは医療事故を防止する目的があります。
そのため、上記のすべての情報を記載するのが望ましいでしょう。
部署によっては、職員が報告しやすいように選択肢から選ぶだけになっていたり、記載する項目を少なくしたりと短時間で作成できるように工夫されているところもあります。
ここからは、インシデントレポートを書くためのポイントについて解説します。
Point1.6W1Hの情報を書く
Point2.事実のみを客観的に書く
Point3.推測の情報を書かない
Point4.時刻や数値などをできるだけ明確に書く
Point5.言い訳にならないようにする
Point1.6W1Hの情報を書く
インシデントレポートに記載するときは、6W1Hを意識すると読みやすく、分析しやすいレポートになります。
6W1Hとは、以下のことをいいます。
・ When(いつ)
・ Where(どこで)
・ Who(誰が)
・ Whom(誰に)
・ Why(なぜ)
・ What(何を)
・ How(どのように)
インシデントレポートは、起こったことをありのままに伝えることが大切です。
記載例:〇月〇日〇時〇分頃、患者Aに〇〇を投与するはずが、誤って〇〇を投与してしまった。
インシデントが発生したときの状況を6W1Hを用いて書くことで、文章を組み立てやすくなります。
まずは、6W1Hに当てはめながら情報を書き出し、そのあと文章にするとよいでしょう。
Point2.事実のみを客観的に書く
インシデントレポートを書くときは、自分の反省や感情を書きたくなることもあるでしょう。
ネガティブな感情があるなかで、どうしても反省文のような表現になりやすい傾向があります。
ですが、あくまでもインシデントレポートは始末書ではないため、事実のみを客観的に書くことを意識してまとめましょう。
患者に誤って薬を投与したが、確認したつもりだった。
患者に○○を投与する前に、確認を怠った。
Point3.推測の情報を書かない
インシデントレポートには自分の推測ではなく、事実のみを書きましょう。
起こった事象に対して自分なりの推測を加えると、周囲に誤った解釈を与えてしまいます。
起こった事実のみを書くことで、インシデント発生時の正確な情報を伝えることができます。
朝の訪問時、患者がベッドの横に倒れており転倒したと思う。
朝の訪問時、患者がベッドの横に倒れているのを発見した。
Point4.時刻や数値などをできるだけ明確に書く
インシデントが発生した時の、日時や薬の量、患者のバイタルなど数値化できるものはできるだけ明確に書くようにしましょう。
発生時の時刻は、○時○分と分単位で書くのが理想的です。
明確に書かれていると、誰が読んでも理解しやすい内容になります。
Point5.言い訳にならないようにする
インシデントレポートに自分の感情を書いてしまうと、インシデント発生の問題点がわかりづらくなります。
理由を書く必要がある場合は、分析の欄があればそこに書くのが良いでしょう。
「時間がなかった」「○○したつもりだった」「○○だと思っていた」
など言い訳に取られてしまうような表現は避けて、
「説明が不十分だった」「確認を怠った」「思い込んでいた」
のような表現に言い換えましょう。
少しだけ表現を変えるだけで印象が変わります!
【例文】インシデントレポートの見本
ここからは、インシデントレポートの書き方を、看護師に多い事例をもとに紹介します。
良い例と悪い例についてそれぞれ解説するので、参考にしてください。
『参照:厚生労働省「重要事例集計結果」より一部加工して掲載』
例文1.点滴の投与ミス
○月○日9時ごろ、主治医から患者Aに対し輸液500mlを8時間で投与の指示あり。9時10分、看護師Aが点滴施行。13時10分に看護師Bが訪室した際、輸液がすでに終了しているのを発見する。看護師Aに報告。点滴開始後から一度も訪室していなかった。患者は気分不快なし。BP 130/88 P 88 Spo2 99%。看護師Aが主治医に報告し、経過観察となる。
○月○日9時ごろ、主治医から患者Aに対し輸液500mlを8時間で投与の指示あり開始。点滴開始後、担当看護師が一度も訪室していなかったため、4時間で終了してしまった。
当事者が複数人出てくる場合は、A、Bなど判別しやすくしましょう。
例文2.転倒
○月○日20時ごろ、家族のナースコールで訪室。患者Bがベッドを背にしりもちをついた状態でいるのを発見する。確認をすると「ポータブルトイレに一人で座ろうとしてベッドから滑り落ちた。」とのこと。起立、歩行可能。痛みや気分不快なし。外傷なし。BP 146/88 P 90 Spo2 98%。主治医に報告し、経過観察となる。
○月○日20時ごろ、家族のナースコールで訪室。患者Bがベッドを背にしりもちをついた状態でいるのを発見する。ポータブルトイレに座ろうとして転倒したのだろう。
推測ではなく、事実を見たままに書きましょう。
例文3.確認不足
○月○日19時ごろ、患者Cの食事後の与薬をするため訪室。患者Dの配薬容器と取り間違い与薬してしまった。意識状態良好。気分不快なし。BP 125/70 P 88 Spo2 99%。主治医に報告し、経過観察となる。
○月○日19時ごろ、患者Cの食事後の与薬をするため訪室。忙しくて、患者Dの配薬容器と取り間違い与薬してしまった。
言い訳は書かず、発生後の対応をしっかり書きましょう。
まとめ
インシデントレポートを作成する目的は、インシデントの再発防止のためです。
犯人探しや個人の責任を追及するものではありません。
そのため、起こった事実を正確に報告し、皆と共有することで、今後の的確な対策につながります。
インシデントレポートに苦手意識のある方は、まずはポイントを押さえて少しずつ完成させていきましょう。
Point1.6W1Hの情報を書く
Point2.事実のみを客観的に書く
Point3.推測の情報を書かない
Point4.時刻や数値などをできるだけ明確に書く
Point5.言い訳にならないようにする